水文調査ではセンサーを使って地下水位の変動を記録していきます。
その際に、水深と合わせて水温も記録しています。
(今どきのセンサーは水温の測定も標準装備です)
調査の目的としては水深だけがわかれば良いので、水温のデータはあまり着目されず放置されているのが現状です。
でも、この水温もよく見ると、その地下水の特徴をよく表していることがわかります。
こちらは、段丘にある観測孔と沖積平野にある観測孔の地下水温の変動グラフです。
水平距離で150m、高低差は20m程度のすぐ近くの観測孔ですが、それぞれの地下水の水温変化は明らかに異なります。
「沖積平野の地下水温」は毎年12月頃に水温が最も高くなり、5月頃に水温が低くなります。
これだけを見ても、地下水の水温は季節的なズレが生じていることがわかりますね。
この地域は積雪のある山地に近いところなので、雪解けの冷たい水が3ヶ月程度遅れて地下を浸透してやって来ると考えることができます。
あと、グラフが滑らかではなくてギザギザになっています。
これは降雨の影響を受けている、すなわち地表からの影響を受けやすいと考えられます。
一方の「段丘の地下水温」は、水温の変動がかなり小さくなっていることがわかります。
それでもわずかな水温の変動傾向を見ると、こちらは毎年2月頃に水温が最も高くなっていることが読み取れます。
「沖積平野の地下水温」よりも2ヶ月ほど遅れてきています。
と、いうことは「段丘の地下水」は「沖積平野の地下水」よりもゆっくりと供給されているということになります。
でも、「段丘の地下水」の方が「沖積平野の地下水」よりも山地に近いところにあるで、位置関係からすると「段丘の地下水」の方が早く供給されるはず?と矛盾が生じます。
ならば、「沖積平野の地下水」は別の供給源があるのでは?という考えも浮かんできます。
この沖積平野には、比較的大きな河川がありますので、こちらから供給を受けているのではないかとも考えることができます。
と、まあこんな感じで、たかが水温ですが、これもよく見るとそれぞれの場所の地下水毎に様々な特徴があって、興味深いものです。