樹冠と土壌

森林水文学の根幹は「森林に降った雨がどれだけ下流に流れるか?」ということを予測することです。
この問題は未だに解明されていません。
もし、仮に治山工事などによって山の斜面がコンクリートで覆われていて、河川の河床と両岸がコンクリートで覆われていたら、話はとても簡単になります。
この場合、山に降った雨はすべて川に流れていきます。下図(a)のように単純明快です。
それでは、この斜面に木を植えていくとどうなるでしょう?
下図(b)のように降雨の一部は葉や枝などの表面(林冠表面)に付着して、コンクリート表面に到達する前に蒸発してしまうでしょう。
このような現象を森林水文学では、「降雨遮断」と呼んでいます。
降雨遮断01.gif
降雨遮断は雨の降り方によっても変化します。
たとえば時間雨量10ミリの雨が1時間続くのと、時間雨量1ミリの雨が断続的に10時間続くのでは降雨の遮断量は異なります。ザッーと降る雨より、しとしと降る雨の方が樹木に遮られて蒸発する量が多くなります。
樹木のあるなしだけで、このようにとても複雑な現象になってしまいます。
「森林水文学(森北出版)」より引用

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